前回は、試合途中で大きなリードを広げたときなどに生じやすい、気の緩みや油断による大逆転負けの心理についてお話しました。リードを広げている最中には充実していたであろう、いい緊張や集中力が失われてしまったために生じる悲劇といえます。
このような心理は、試合開始前にも生じる危険性があります。過去の対戦実績や前評判から生じる油断です。この相手(チーム)に負けるわけがない、と思ってしまうことがあるでしょう。そのような考えは良くないとは分かっていても、そう感じてしまっているのですから仕方ありません。
大切なのは、その気持ちのまま試合に臨まないようにすることです。リードされて負けていたり、対戦相手が強敵であったりすれば、自然に緊張が強くなります。しかし、意図的にそのようなモードに切り替える努力をすることが必要なときもあるのです。
緊張や気合を充実させる
試合では、競う相手が誰であろうと、どういう状況や展開であろうと、自らの最高のパフォーマンスを発揮するためには、必要程度の緊張や気合を充実させなければなりません。今回は、そのような緊張や気合を意図的に高めるアクティベーション(活性化)の方法を紹介したいと思います。
基本的には「立ち方」と「呼吸の仕方」の工夫によるアクティベーションです。まず立ち方ですが、足を肩幅の広さに開いて、少しお辞儀をするような姿勢、すなわち胸を少し前に出し、おなかに軽く力を入れて上体を少し前傾させて、しっかりと両足で地面を踏み締めます。このような立ち方で行うのがアクティベーション呼吸です。
息を吸い込んだら、おなかに力を入れて一気に強く吐き出します。これを何回か繰り返します。間もなく、気合が満ちてくるような感覚になってくるでしょう。試合直前や試合中に「行くぞー!」などの大きな声を出すことがあります。この行為は、まさしく、おなかに力を入れて強く息を吐くアクティベーション呼吸です。
軽くジャンプしても効果的
さらに、その姿勢のまま軽くジャンプして、着地の際に両足で地面を強くたたく動作を数回繰り返してみましょう。もっと気合が入ってきます。
以上のやり方を参考にして、気が緩んだときに気持ちを切り替え、強い気持ちで挑む〝戦闘モード〟を意図的につくり出す方法を自分なりに編み出してほしいと思います。
これまで5回にわたってメンタルコンディショニング講座を展開してきました。試合で実力を発揮することは容易なことではありません。むしろ発揮できないことの方が多いのではないかと思うくらいです。しかし、このコラムで紹介してきた方法を生かして、多くの選手が試合で実力を発揮してくれることを願っています。
①足を肩幅の広さに開き、両足で地面を踏み締める
②胸を少し前に出し、おなかに軽く力を入れて上体を少し前傾させる
③息を吸い込んだら、おなかに力を入れて一気に強く吐き出す。これを何回か繰り返す
④軽くジャンプして着地の際に両足で地面を強くたたく動作を数回繰り返せば、さらに気合が高まる
(岩田真一=日本女子体育大講師)