スポーツのための栄養学

第 8回 水分補給について考える(07年4月号掲載)

冬から春、春から夏と気温が上昇する時期の体調管理には、水分補給は欠かせません。そこで今回は、水分補給について考えます。

体水分の役割とは

一般的に体内の水分量はどのくらいか知っていますか?体重の約60%に相当するといわれています。体水分は、細胞機能の維持、物質の運搬、体温調節といった役割があります。

物質の運搬では、体内の老廃物や栄養物質を水に溶解させて必要な場所へ移動させます。例えば、筋活動に必要なエネルギー源やその他の栄養素、酸素や二酸化炭素などです。

体温調節では、水は比熱が大きいため、気温や室温が低下しても体温は低下しにくいことから体温保持に役立っています。また、体温が高くなると皮膚から汗として水分を放出し、効率的に体温を下げる作用があります。脱水状態になると血液が濃縮され、循環機能が低下します。体水分は体の重要な役割を果たしているといえるのです。

水分補給の考え方

体内の水分量は一定に保つ必要があります。運動時はさらに、運動によって使われたエネルギーおよび栄養素を水分補給の際に摂取することが、パフォーマンスの維持のためには必要となります。

それではパフォーマンス維持のために必要な栄養素とは何でしょう。

①電解質

汗中の成分は水だけでしょうか?水以外に、電解質といわれるナトリウム、塩素、カリウム、マグネシウム、カルシウムが含まれています。したがって、汗を放出すると、水分の喪失と同時に電解質の喪失にもなります。
運動中、発汗により電解質が喪失した状態で水分だけを補給すると、電解質の濃度をさらに減少させてしまうことになります。電解質が不足すると筋肉に痛みをともなったけいれんが起こります。汗は99%が水分で、残りの1%が電解質です。このわずかな電解質が、運動時のパフォーマンスの維持には必要不可欠となります。

②糖質

運動によってエネルギーが消耗し、血糖値が枯渇するとパフォーマンスが低下することは周知の通りです。エネルギーを補給することによってパフォーマンスを維持、そしてほんのわずかかもしれませんが回復することができます。そこで、水分補給の目的の一つに糖質補給があります。糖質補給は、血糖値の維持、パワーの源である筋グリコーゲンの補充・低下防止などの効果があります。

死に至る危険性も

水分補給の考え方として重要なことは、第一に水の補給です。その次の段階として、電解質と糖質の補給を考えるべきです。電解質と糖質を優先的に考える場合は、水分補給の目的とは異なります。体水分を維持することを第一に考えてください。一般的に市販されているスポーツ飲料の多くは、水の摂取を第一としていることから、電解質や糖質濃度は低く抑えられていることを付け加えておきます。

暑熱環境下での運動は、体調不良ということだけでなく、死に至る危険性もあります。水分補給はスポーツ関係者にとって誰もが把握しておくべき内容です。

(亀井明子=女子栄養大非常勤講師、国立スポーツ科学センター研究員)