スポーツマインド

第 2回 野球特待生制度(07年5月号掲載)

西武ライオンズがドラフトでの指名を前提にアマチュアの選手に裏金を渡していたことが発覚したのを受けて、高校野球連盟が野球特待生制度の完全廃止に向けて動き出した。

特待生は学校から金をもらうわけではないが、一般の生徒なら払わなければならない授業料や寮費を免除される。それを条件に有力選手をスカウトするのは、授業料や寮費分の金を与えるのと同じだということからなのだろう。もともと、野球選手であることを理由に金品を受け取ることは学生野球憲章で禁止されているのである。

これには賛否両論あるようだが、ぼくはよいことだと思う。というのも、つねづねつぎのようなことを思っていたからだ。

東北のある野球強豪校などには、一学年あたり20人、合計60人以上の野球特待生がいるということだが、誰でも知っているように野球には9つのポジジョンしかない。ほとんどの特待生は試合に出られないのである。

そういう毎日の中で野球に対するモチベーションを失ったとき、どうするのだろう。特待生の身分では野球をやめられないだろう。やる気もないのにつづけなければならない。

あるいは、怪我(けが)をして野球ができなくなるかもしれない。そういうとき、学校は特待生の身分のまま、退部を認めて在校させておくのだろうか。

しかし、それを許されたとしても、許された特待生の肩身は狭いだろう。いずれにしても、甲子園からプロや大学に行く一握りの有力選手の陰で、彼らは心に深い傷を負うのである。

しかし、自費で入学すれば、そういうことはなくなる。

いやになったらいつでも野球をやめられるし、怪我をして野球ができなくなったとしても、何の気がねもなくクラスに帰ることができる。そして、堂々とべつの目標に向かえるのである。これが自由な生き方というものだ。

また、高校野球連盟は、経済的困難がある生徒が正規の手続きで奨学生になることまでは否定していない。

金で自由を失わない道はいくらでもあるのである。

(作家)