トレーニング論

第 6回 オフシーズンのトレーニング(07年1月号掲載)

高校生スポーツ選手の多くがオフのトレーニングに励んでいる昨今です。そこで、オフのトレーニングにかかわる基本的な考え方について述べておきたいと思います。

まず、オフシーズンをどう過ごすか、ということが科学的に理解されるようになったのは、そう古い話ではありません。せいぜい50年くらい前のことです。

そのころまでは、オフに入りますと長いシーズンの疲れを取るかのように休みを取るのが一般的でした。今でも慣習的にそのようなオフの取り方をして、正月になったら心機一転、トレーニング開始という光景が見受けられます。

一般的にオフシーズンでは、時間とエネルギーの大半が鍛錬という身体的トレーニングに費やされる、とされています。シーズン中は、体の構造や機能を向上させることが大変難しいので、来るシーズンに向けて身体的条件を再構築し、さらにその上に積み上げようとするからです。こうした考え方は、50年ほど前にもあったように思えますが、この期間でも「巧みさ」のトレーニングを欠かさないところに現代トレーニングの特徴があります。

これには2つの意味があります。技というものは、いったん身に付いたら、いつまでも失われないものではありません。技を身に付けるまでのような頻度は必要ないにしろ、巧みさのトレーニングを中断することは許されません。これを「強化」といいます。

また、体の構造が変わっていくと、巧みさやフォームをそれに合わせて微妙に調整しなくてはいけません。したがって、オフシーズンのトレーニングには、巧みさのトレーニングがなくてはならないのです。野球であったら、走力、筋力のトレーニングとともに、投げる、打つといったスキルアップのトレーニングも行うということです。

以上のような考え方に立ちますと、なぜシーズン中に身体的なトレーニングを行うのかという意味が分かってきます。

身体的な作業能力の要素、例えば筋力は、非常に高い水準にまで高めたとしても、筋肉に適正な負荷(力)が加わらないと、その水準は比較的短い時間で低下してしまいます。性差や年齢などにもよりますが、筋力のトレーニング理論で有名なヘッテンガーによれば、その期間はわずか2週間といいます。

シーズンに入って何もしていないわけではないので、シーズン開始2週間後に筋力が落ちてくるというわけではありません。しかし、野球なら野球ばかり、バレーボールならバレーボールのみの練習を繰り返しているとしたら、オフシーズンに鍛えた身体条件、特に筋肉の条件はそう長くは維持できないのです。

したがって、シーズン中も身体的トレーニングを欠かすことができない、という理屈になります。

スポーツ種目によってスキルアップとフィジカルのトレーニングの割合は違ってきます。ちなみにアメリカの野球界では、オフシーズンのスキルトレーニングの割合を20〜30%、シーズン中のフィジカルトレーニングの割合を20〜30%を目安にしているようです。

(田中誠一=浜松大教授・東海大名誉教授)