トレーニング論

第 8回 クーリングダウン(07年3月号掲載)

ウォーミングアップから始まりトレーニングが進行していきますと、血流が促進されて中枢神経の動きが良くなったり、セロトニンのような物質が分泌されたりして、ある種の壮快感を感じます。

しかし、水分、糖質、脂質などの物質は運動によってそれぞれ減少し、それに伴って無機質・ビタミンなども消耗していきます。骨格筋が激しく伸びたり縮んだりすると、顕微鏡の観察下では微細な損傷すら見られることがあります。ボクシングの強烈なパンチやバーベルを用いてのパワーリフティングなどでは、そのようなことが体内で生じていると考えられます。

これらのことから言えることは、体はトレーニングの進行とともに消耗していく、ということです。消耗した体は、トレーニングを中止することによって回復させなくてはいけません。この回復過程は、ベタっと座り込むような静的休息と、ストレッチングやジョギングをする動的休息に分けられます。動的休息は骨格筋の代謝が高まるだけでなく、身体のゆがみや筋疲労のアンバランスが調整されることなどからして、静的休息より優れた休息法といえます。

しかし、動的休息をしても水分や栄養素の補給がない状態では、トレーニング後のコンディションは横ばいで回復期に入れません。十分な水分と栄養素の補給が回復過程を左右します。

十分な栄養素を運搬するのは血液ですから、クーリングダウンといわれるトレーニング直後の軽い運動が重要な役割を担っています。マッサージやシャワーなども血流促進の一翼を担っているので、これを利用することも大切です。
さて、クーリングダウンや飲み物・食べ物の摂取で回復期に入った体は、その後どのような過程を進むのかと言いますと、時間的経過は、運動の質と量によって異なります。例えば筋力トレーニングなら24時間、パワートレーニングなら48時間ぐらいの時間を必要とします。従って、一般論からすれば、例えば今日の午後に筋力トレーニングを行って、明日の午前中に再び筋力トレーニングを行ったのでは、前日のトレーニング効果が十分に獲得されないうちに体に再びダメージを与えてしまうので、十分な回復過程とはいえません。

疲労の回復過程ですが、回復がトレーニング開始時の水準点で終わってしまいますと、何のためのトレーニングだったか分からないということになります。ヒトの体はよくできたもので、合理的な栄養の摂取と十分な休憩時間を取ると回復はトレーニング開始時の水準を超えてさらに高い水準へと体のコンディションを構築していきます。これを超回復といい、正の効果と呼びます。これがトレーニング効果です。

(田中誠一=浜松大教授・東海大名誉教授)