女子高校生がスポーツの場面で活躍する機会が多くなりました。ヒトの発育・発達は、男子に比べると女子の方が早い傾向にありますから、当然ともいえます。しかし、発育・発達は競技力向上に都合の良いことだけではありません。女子の体が完成するということは、女性として受胎の準備が整っていくことにもなるのです。
初潮遅れは受胎率に影響せず
女性が本格的なスポーツ活動を年少のころから経験しますと、初潮の時期が遅れる傾向にあります。例えば、チーム構成に年齢別人数を割り当てることもある駅伝。タイムを意識したトレーニングの機会が多くなると、初潮が1、2年遅れることが間々見受けられます。こうした遅れは女性としての機能に悪影響を与えるのかといえば、そうではありません。競技者生活が終わった後の受胎率に影響がないという研究報告があり、医学的に問題なしといえるのです。
陸上の中長距離走や体操では、減量という言葉がよく聞かれます。同時にこれらの競技では、貧血や骨密度の低下に悩む女性アスリートが多いことが問題になっています。これは、減量という概念がひとり歩きしていることが問題なのだと思います。
ここのところ、バルセロナ、アトランタで有森裕子が、シドニーでは高橋尚子が、そしてアテネでは野口みずきが、とわが国の女子マラソンはオリンピックの舞台で大活躍です。確かな情報ではありませんが、彼女たちのレース当日の体脂肪率は7~8%だったといいます。彼女たちに追いつけ追い越せと頑張る女子アスリートたちは、いつの間にか減量がトレーニングの目標のように思ってしまうこともあります。その結果、競技力の向上はある程度達成されるのですが、一方では思わぬことが体の中で起こることが多いのです。それが貧血や骨密度の低下です。どちらも健康度のことを考えると放っておける問題ではありません。健康度が高いほど、質的にも量的にも高いトレーニングが可能だからです。
無月経が続くと骨密度低下
骨密度の低下について触れると、骨の脆弱化の前提として、性周期の不順、あるいは無月経があります。これは減量と称した食事制限、長時間続く有酸素系トレーニングやレースからくるものです。無月経そのものは健康度の低下ではないのですが、月経に関与するホルモンの働きが正常ではなくなるので、骨の組成に負の影響を及ぼします。したがって、運動性の無月経が長く続きますと骨密度が著しく低下することが考えられます。
ただし、受胎率に影響はなく、競技経験のある女性の方が、そうでない女性より安産の傾向があるという調査報告もあります。
(田中誠一=浜松大教授・東海大名誉教授)