トレーニング論

第14回 目覚めよ足底筋パワー(07年10月号掲載)

動物の足のなかでも、サルとヒトはよく似ています。ところが、似たような足を持ちながら、サルは二本足立ちの姿勢になったとき、ヒトほど長い時間その姿勢を保てません。

なぜかといいますと、サルの足はヒトの足と違って土踏まずがなく、指と指との間が接触しているからです。二本足立ちの姿勢になったとき、足裏がペタリと地面に接しているので、腰や上体、頭部の揺れに対応できずに、短時間で四足立ちになってしまいます。

足の指で面をつかむ機能

ヒトの足はどうでしょう。26の骨で構成されていて、指の付け根の内側から外側へ横のアーチが形成されています。また、足底の内側と外側に縦のアーチが形作られています。土踏まずは、このアーチの内側のことをいうのです。そして、5本の指はそれぞれ離れていて、親指を除いた4本の指は、やや放射状に広がっています。こうした足の構造は、足底が面をつかむ機能を持ちます。

優れた競技者の足の指を見せてもらうと、たこができています。たこは、皮膚の一部が絶えず刺激を受けて擦れ、硬くなったものです。優れた競技者の多くは、運動動作の肝心なときに、床面や靴のインナーソールをつかんでいるのでしょう。

プロゴルファー青木功のゴルフシューズのインナーソールには、5本の指の跡がついていたそうです。彼がショットする際、足底の筋群でインナーソールをしっかりとつかんでいた証しです。立位や動作のときに足底の筋群で床面などをつかむ機能は、随意的ではなく、反射的に行われています。イチローもボールを打つ瞬間、足の指はスパイクシューズのインナーソールをつかんでいるはずです。このとき、足の指で物をつかんでいるということを意識していないはずです。

現代では休眠している状態

運動機能を高めるために、さまざまなトレーニングが展開されますが、基本中の基本となるのが足底の持つ機能を高め維持するトレーニングです。なぜならば、現代の子どもたちは、土の上などで遊ぶ経験をしていない子が多く、下駄を履く習慣もほとんどありません。そのため、足底筋の本来持つ機能が休眠している状態です。これを呼び覚ますトレーニングが必要になります。

トロッティングが有効

1992年の巨人軍キャンプで行った芝地トロッティング(足首から下の動きを意識した小刻み走)がそれです。トロッティングは本来、はだしでやるべきなのですが、とげなどで足を痛める危険性があるため靴下履きで行いました。打つとき、投げるときに足裏がシューズのインナーソールをつかむことを期待してのことです。
  若い競技者たちは、足底の筋肉が眠っているかもしれません。少なくとも1日おきぐらいにはだしで砂地や草地を歩く、できればトロッティングをして競技力の向上を図ってはどうでしょう。

(田中誠一=浜松大教授・東海大名誉教授)