トレーニング論

第15回 「何の力をつけるか」を考えよう(07年11月号掲載)

近代スポーツでは、年間の流れをオフシーズン、プレシーズン、シーズンに分けて、それぞれ目的を持った過ごし方をします。この時期、高校生のスポーツ活動も、多くの種目でオフシーズンに入ります。

走り込みとウエートの場合

オフシーズンの過ごし方の特徴は、体づくりといわれます。よく見られる体づくりは、走り込みやウエートトレーニングです。ともに、ただ単に走ったり力をつけたりするだけでなく、目的に応じて行われているでしょう。本稿ではその辺りを分かりやすく整理したいと思います。

走り込みというと、何度も繰り返し走る、または長い距離を走る、と受け取られています。

「走る距離」で効果に違い

前者はどうでしょう。幾度も繰り返すのですから、走る距離は短く、時には坂道だったり、寺社の石段だったりするでしょう。もし、インターバルが2~3分間だったら、野球でランニングホームランを放ち三・本塁間でリズムを崩さず走り切れる脚筋持久力(無酸素系の能力)が鍛えられます。走る距離が200メートル以上でインターバルをジョギング(動的休息)でつなぐと心臓・血管系の強化につながります。

後者の場合、赤血球、赤血球中のヘモグロビン、細胞のミオグロビンの酸素運搬・分散の機能が向上し、陸上競技の中・長距離走者の競技力(有酸素系の能力)向上に貢献します。

同じ「走る」動作のちょっとした違いに見えますが、体づくりの中身が全く違ってくるのです。野球選手が有酸素系の能力を向上させた場合、トレーニングや試合での疲労回復過程への貢献は高まるでしょうが、第一義的な走力にはなりません。

負荷の掛け方による変化

ウエートともいわれる抵抗運動も走り込みと同様、やり方次第で体の出来具合が全く違ってきます。数回しか繰り返せない重さを背負って、ひざを半分曲げた状態までしゃがんで立ち上がる(ハーフスクワット)とします。高校生の年代ですと数週間で太もも、お尻の筋に肥大(太くなる)が見られるでしょう。

ここでも、3~5回ぐらいしか繰り返せない重さでできるだけ速く立ち上がるようにするか、十数回繰り返せる程度の重さで軽くジャンプするかで、運動機能の発達に違いが見られます。

前者は、脚筋力を鍛えるので、ゴルフで斜面から正確なショットを打つときなどに役立つでしょう。後者は、走り幅跳び、サッカーのゴールキーパーの鋭い動きやジャンプ力の背景になります。走り込み同様、何の力をつけるかを考えてやらなければ、無駄の多いオフシーズンになりかねません。

(田中誠一=浜松大教授・東海大名誉教授)