トレーニング論

第18回 目的意識を持って鍛える(08年2・3月号掲載)

「計画通りの効果」をチェック

スポーツトレーニングには、必ず守らなければならない原則があります。トレーニング計画は、スポーツを行っている人なら誰もが日常的に意識しているものです。でも、トレーニング計画を誤解している人もいるのではないでしょうか。

コーチからトレーニング計画を手渡されたとき、計画を実践することで自分の体がどのように変わり、競技力がどのくらい伸びるのか、トレーニング効果がいつ表れるのかを見通したでしょうか。もしそうだとしたら、トレーニングに対する「やる気」は十分だったでしょう。そうでないとしたら、トレーニング内容を指示されたと受け止めているだけなのです。

これから行うトレーニングが自分の身体構造や機能をどう変えていき、競技力が向上していくのか分からない――。これでトレーニングを正確に行えるのでしょうか。いつごろまでに身体がどの程度改善されるのかを見通さなくては、長続きさせることだって難しいでしょう。

内容理解し見通しを立てる

トレーニング計画を実践するときには、その内容をよく理解し見通してから始めることが大切です。「自分のためのものだ」「明るい見通しが立っている」と認識することで、トレーニングの実が得られるのです。

プロゴルファーの宮里藍が高校1年の時、下肢の強化に重点を置いた時期があり、約2週間ごとに次のようなチェックをしました。

まず、足を真っすぐ伸ばして座り、つま先も伸ばします。トレーナーは、つま先の上に両手を当てて押さえます。この状態で、宮里は全力でつま先を上げ足首を曲げようとします。トレーナーは、前脛骨筋という、むこうずねの筋力を知ることができます。

続いて、うつぶせになり両ひざを90度に曲げ、トレーナーがかかとを両手で押さえます。宮里がかかとを尻に近づけるように努力することで、トレーナーは大腿二頭筋という太ももの裏側、下腿三頭筋という、ふくらはぎの筋力を知ります。

「負の効果」なら計画変更も

最後にあおむけになり、両ひざを曲げて胸に付け両足裏でトレーナーをけり上げることで、大腿四頭筋という太もも前面の筋力をチェックします。これらのチェックを通じて、以前に比べてどのようなトレーニング効果を得たのかを知ることができるのです。

トレーニングでは、競技者をよく知る指導者によって短期的にチェックされ、計画どおりの効果(正の効果)が得られているのか、または、期待に反して負の効果が表れているのかを知る必要があります。正の効果が予想以上のものであればトレーニング負荷は、量的にも質的にも高めることが必要になります。負の効果であれば計画の変更が必要です。計画とは、変更を重ねながら実践していくものです。

(田中誠一=浜松大教授・東海大名誉教授)