トレーニング論

第20回 テニス伊達の復帰戦に思う(08年6月号掲載)

4月に現役復帰したテニスの伊達公子が、日本人初の世界ランクトップ10入りしたのは1994年。翌年に世界ランク4位になり、96年には当時の世界女王シュテフィ・グラフ(ドイツ)を破り、その年に26歳で引退しました。

今回は、37歳での11年半ぶりの復帰でした。シングルスで準優勝した伊達のパフォーマンスから、高校生アスリートのトレーニングに役立つことを述べたいと思います。

マラソン完走との関連性

復帰戦に関して、一部の新聞で、予選から決勝まで戦い抜いた背景には2004年にフルマラソンを3時間27分40秒で完走した能力があった、と報道されました。しかし、少々正確性に欠けているように思えます。

テニスは遺伝学的に、瞬発力を発揮する無酸素系運動に適した白筋線維優勢型の体質が有利なスポーツです。フルマラソンを完走する能力は、有酸素系運動の全身持久力で、セット間や翌日のゲームまでの疲労回復には大いに貢献したでしょう。

ラリーに必要な「筋持久力」

しかし、長いラリーを耐え抜く能力は、石段を何十段も駆け上がるような無酸素系トレーニングによってつくられます。これは「筋の持久力」で、有酸素系運動の粘りとは異なります。激しい打ち合いで粘りを発揮した伊達には、筋の持久力が備わっていたに違いないということになります。

また、伊達は若いプレーヤーをしのぐような正確で力強いストロークを見せました。これは神経支配系や柔軟性に大きく依存する、筋のパワートレーニングによるものです。

いわゆる筋トレで鍛える要素は、筋のパワー・筋の持久力・筋力です。筋トレでは、何の要素を鍛えるのかをはっきりさせる必要があります。陸上短距離走者のダッシュ力は筋のパワー、上り坂走に耐える足腰は筋の持久力、ラケットをしっかり握る手の力は筋力になります。

(田中誠一=浜松大教授・東海大名誉教授)