トレーニング論

第26回 体を動かさずに鍛える(09年9月号掲載)

筋力はスポーツ動作のすべてといっても過言ではないくらい、多くの場面でさまざまな形で発揮されています。従って筋力トレーニングにおいては、筋力の基本的な発揮のされ方を知っておくことがとても大切になるのです。

高校生プロゴルファー、石川遼のショットは、とてもパワフルです。このショットが成り立つためには、幾つかの要素が存在します。

その一つに、グリップと呼ばれているクラブの握り部分に発揮されている、筋肉や関節が伸び縮みしない筋力があります。ショットを打つ際には軽く握るのがこつですが、手のひらの筋力が高ければ高いほど、軽く握るこつを楽に会得することができます。

堅い物を最大の力で握る

そのために日ごろ、堅い物を最大の力で握り締めるトレーニングを心掛けます。トレーニングで鍛えた力は、トレーニング時の関節の角度で最も発揮されます。石川遼の場合、日ごろから使用しているクラブの握り部分をギュッと力を込めて握るトレーニングが有効でしょう。

このように、体を動かさないトレーニングをアイソメトリックトレーニングといいます。これは、野球のピッチャーがボールを握る力、バッターがバットを握る力などでも用いられます。

特別な器具は必要なし

筋肉の伸び縮みが少ないので安全性が高い、特別な器具を必要としない、オーバートレーニングに陥りにくい、という利点があります。半面、トレーニングをした関節角度以外では効果が少なかったり、動きのある筋力発揮においては効果が少ないなどの欠点もあります。

アイソメトリックトレーニングをする際は、最大筋力の40%以上でよいとされていますが、実践から見ると最大筋力発揮を6~10秒間行い、2~3分休みで3~5セット、1日1回がよいようです。

(田中誠一=浜松大教授・東海大名誉教授)