近代トレーニングでは、トレーニングの可能性を求めるのと同時に、安全と健康に留意することが大切です。
トレーニングには確実に効果の上がる運動負荷が存在します。例えば、全身の持久性を高めるために最大心拍数の何%の水準で鍛える、筋力を高めるために最大筋力の何%の水準以上で鍛える――といったものです。
以上のような知見(科学的に確かめられていること)に立ってトレーニングを展開していくのは当然です。しかし、もう少し深く、運動と身体の生理的な面との関係を知っておいた方が良いと思います。
分かりやすいケースとして、血圧と心拍数の話があります。血圧は、心臓が縮むときに高くなり、広がるときに低くなります。この上昇と減少は、運動時にどのように変化するのかといいますと、健常なアスリートなら収縮期圧(縮んだときの圧力)の上昇、拡張期圧(広がったときの圧力)のわずかな減少(または不変)のために血圧の上下の幅が増加します。
運動しても収縮期圧が30mmHg(Hgは水銀柱)以上増加しない場合は異常です。200mmHgを超える上昇も運動に対する病的な反応です。このようなときは、専門医の診断を受け、許可のもとにトレーニングを行わなければいけません。
心拍数も危険を知らせる加減を確認しておきましょう。心拍数は運動強度を表しますので、インターバルトレーニングなどでは常にカウントする場合があります。
予測最大心拍数である「220マイナス年齢」に近づくほど運動は強いことになります。予測最大心拍数の85%までしか運動強度を上げないことが、安全を保つ上で大切とされています。比較的低運動量で心拍数が急増すれば、身体に何らかの異常が考えられるため、上記の血圧と同様の対応が必要です。
(田中誠一=浜松大教授・東海大名誉教授)