『敗戦からの収穫』
インターハイ東京都予選のF組1次トーナメント決勝が、5月24日につばさ総合高校グラウンドで行われ、三鷹は国士舘に1-3で敗退した。
しかし、三鷹にとっては意味のある一戦だった。試合を通じてほとんど得るものがなかった1、2回戦に比べ、国士舘との対戦は「自分たちに何が足りないのか」という部分において新しい発見があった。
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この日、イレブンに気後れはなかった。負けることに脅えることも、焦ることもなく「前へ、前へ」向いた気持ちと連動し、選手の足も前へと突き進んだ。
前半、三鷹は幾度となく得点のチャンスをつかんだ。それは、コーナーキックや相手ゴール近くからのスローインによる、セットプレーからのものだった。当たりの強い国士舘の守備に屈することなく、果敢に攻撃を仕掛けた結果生まれた機会。だが、そのチャンスをものにできず、得点に結びつけられない。そのまま両チーム無得点の状態が続いたが、前半終了間際に先制点を奪われた。それまで攻める時間の多かったイレブンが表情を曇らせる。
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だが、後半に入ってからも戦う姿勢に変わりはなく、積極的なボール運びによって同点弾が生まれた。ボランチから右サイドにうまく飛び出たパスを受け、「思いきって蹴っていこうと思った」という吉野康次郎(3年)の放ったミドルシュートがゴールに吸い込まれた。
これで試合の勝敗は分からなくなったかに見えたが、その後決定的なチャンスにしっかりと得点を重ねた国士舘に軍配が上がった。
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試合終了の笛が響くと、その場にしゃがみ込む選手がいたほど、結果に対する悔しさをにじませたイレブン。しかし、「声も出ていて、今までの中で一番チームが一つになっていた」と主将の大木大輔(3年)が試合後のミーティングで話したように、悪い試合内容ではなかった。
山下正人監督は「決めどころで決められないという弱さはあるが、課題が見つかった試合だった。今まで目の前が真っ暗だったのが、やっと針先くらいの光が見えてきた」と選手の健闘に目を細めた。
課題というのは主に、セットプレーからどのように得点へ結びつけるのか、ということ。ヘディングなどに競り勝ち直接ゴールへ押し込む強さ。また、直接でなくても、1人2人を介しゴールへつなげる周りの判断力。そういう部分をこれからの練習で強化していく。
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公式戦では8月後半までTリーグがあるものの、今後は9月から始まる選手権予選に焦点を合わせ、ますますチームのサッカーに磨きをかけていくことになる。
「練習でやってきたことは、必ず結果に表れる」と山下監督。練習の成果を本番で、しかも試合の決定的チャンスに発揮できるかどうか。それがこれからの試合において、勝負の分かれ目となるだろう。
『気合』
5月18日のインターハイ予選2回戦は、三鷹高校グラウンドで日大鶴ヶ丘(東京)と対戦。気を引き締めて挑んだイレブンは、2-1と勝利を収めた。
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試合に対する選手らの気持ちの入れようは、開始直後から感じられた。17日の1回戦で、思うようなゲームができなかった悔しさを振り払うように、イレブン全員が気合に満ちたプレーを披露した。
ボールも人も動く攻撃で、前半10分にも満たない時間に、森下建臣(3年)のシュートがゴールネットを揺らした。その後も、得点に結びつくことはなかったが、前線の選手を中心に相手ゴールを脅かした。
守備では、相手に攻め込まれる危ない場面があったものの、GK福田陽介(3年)が体を張ったプレーでセーブし、前半を無失点で折り返した。
後半に入ると坂上怜弥(2年)の追加点で、日大鶴ヶ丘を突き放すが、約10分後にセットプレーから点を奪われてしまう。
残り時間が10分を切ると、疲れからかチーム全体の士気が落ちたようだったが、全員守備で次戦の切符を勝ち取った。
「昨日の試合よりは、運動量もあって良かった。ただ、疲れている時に声が出ていない」と山下正人監督は、前半の動きが良かっただけに、後半の失速を残念に感じていた。
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三鷹の選手や監督がよく言葉にする「試合中に声を出す」ことは、サッカーの試合をする上で大事なことである。
動いている味方が声を出し自分の位置を知らせることで、ボールを持っている選手にいくつもの判断材料を与えられる。また、声を出すことで、お互いのプレーの連携を図ったり、試合の雰囲気や自分たちのモチベーションを高めたりなど、ゲーム中に「声出し」はなくてはならないのだ。
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「今まで練習でやってきたことを、なかなか試合で発揮できていないので、(次の試合まで)あと1週間、練習をしっかりと頑張りたい」と、副主将の堀大輝(3年)。
20日からは学校の中間テストだが、24日の1次トーナメント決勝に向けて、テスト期間中も練習に励む。
『インターハイ予選始まる』
「三鷹のゴールが見た~い♪ 見た~い♪」。ピッチの外から、メガホンを持った部員たちによる三鷹の応援歌が響く。
5月17日(土)、全国高校総体(インターハイ)の東京都予選1次トーナメントが三鷹高校グラウンドで行われた。高校サッカーでは、大きな山場となる夏のインターハイに向け、イレブンは気合を入れて初戦に挑んだ。
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前半、森下建臣(3年)が先制点を決めた。後半には相手キーパーがはじいたボールを、木内雅浩(2年)がゴールへ押し込み、2-0で安田学園(東京)を退けた。
しかし、選手たちに喜びの表情はなかった。
木内は「誰がどこにいるか、という声が全体的に出ていなくて、一人ひとりが孤立していた」と反省点を口にした。
試合中、厳しく指示を飛ばしていた山下正人監督は、「気持ちが弱いから慌てていた。自分たちでミスをしているようではだめ」と振り返った。
負けたら終わってしまう公式戦の重圧から、プレーに焦りが生まれた。そのため、相手にすきをつかれたり、パスミスをしたりなど、課題や反省が残った。
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試合後のミーティングで、山下監督は選手たちに喝を入れた。
「悔しくないのか、こんな試合して。中途半端にチームに3年生が残らなきゃ、1、2年生が(来年に向けて)試合経験が積めるんだよ。残るなら、自分に何ができるのかよく考えろ」
山下監督は、引退の時期を3年生自身の判断に任せている。4月に引退した選手がいる一方で、現在いる3年生は、自分たちの意志でサッカー部に残ることを決断した。
監督がその場を立ち去ったあと、主将の大木大輔(3年)は輪になっていた選手らの前に出た。「今いる3年生はよく考えた上で残っているわけだから、(ここで)気持ち、入れ替えよう。頑張ろう」
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2回戦は、翌18日。時間はないが、気持ちは変えられる。
鶴長大悟(3年)は、「サイドチェンジなど、試合に向けてやってきた練習が、今日はできていなかった。明日はしっかりとした形で点を取りたい」。2回戦に向けて意欲を燃やした。
『T1リーグ』
晴天に恵まれたゴールデンウィーク最終日の5月6日。Tリーグ1部の第5節が、清瀬内山グラウンド(東京)で4試合行われた。
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選手権や高校総体(インターハイ)は、トーナメント方式で行われるため、1度負けてしまうと1年間で経験できる公式戦の数が限られてしまう。
多くのチームが平等に、一定の試合数を行える環境にするため、2005年からTリーグがスタートした。高校のチームとクラブユースが直接対決できる貴重な公式戦でもある。
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今年度から1部のT1リーグに昇格した三鷹の成績は、1勝4敗(5月6日現在)。毎週のように東京都のトップチームと対戦を繰り返す。
試合は土日のほか、学校の授業が終わった平日の夜に行われることもある。過密なスケジュールで大変ではあるが、「強いチームと戦えるのはうれしい」と選手たちは、試合ができることを楽しみにしている。
本橋亮人(3年)が「強い相手と戦うことで、自分たちの弱点や課題が見えてくる」と言うように、試合をすることで、チームに足りないものが見えてくることも多い。
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6日の試合は暁星(東京)に0-1で敗れた。試合後の選手らの表情からは、悔しさがにじみ出ていた。一瞬の判断、攻撃に切り替わったときの動き出し、味方へのパスや声掛けなど、まだまだうまくいかないことが、試合の中で明白になったことを選手たちはよく分かっていた。
しかし、落ち込んでばかりもいられない。5月11日からは、インターハイ予選が始まる。今度は、リーグ戦とはまた違う「勝ち抜け」の試合に臨むことになる。
『引退します』
いつもより練習を早めに切り上げ、手早く片付けを済ませると、部員たちは全員、輪になりグラウンドにしゃがみこんだ。3年生の引退式をするためだ。
引退といっても、3年生全員ではない。4月の関東大会、5月から予選が始まる高校総体、そして冬の選手権と大きな大会を節目に引退の時期が3回に分けられている。
3年生になると受験勉強が本格化するため、山下正人監督が引退の時期を個人の判断に任せているのだ。
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関東大会で引退する3年生は、4月24日の練習が最後になった。
「今日で引退します。今までありがとう」。練習中の活気とは打って変わり、少しだけしんみりした中、十数人が一人ずつあいさつをしていく。
ほとんどが「(練習は)つらかった」と振り返ったが、「けど」とそれぞれ言葉を続けた。
「みんなと一緒で楽しかった」「いつもみんなに励まされていた」「笑うことの方が多かった」「みんながいつも声を掛けてくれてうれしかった」
慣れないあいさつで照れくさそうにしながらも、思い思いに口にした言葉は、2年間で得た仲間との絆(きずな)を表していた。
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中には、話している途中に涙を浮かべる人もいた。「本当は、もっと続けるとみんなに約束していたのに。守れなかったけど、いつもと変わらずに仲良くしてくれて、ありがとう」
20分間の引退式。あっという間に下校時刻になり、引退する部員らは肩を組みながら、見慣れた土のグラウンドを後にした。